平成28年度 更埴理科研究同好会 物理化学研修会 H29.1.28
「望遠鏡作りを通して、望遠鏡のしくみを考える~光の進み方を使って~」
講師 総合教育センター教科教育部 専門主事 渋谷 孝信先生
1月28日(土)に埴生中学校にて、渋谷孝信先生を講師にお招きし、ルーペを使って、光の実像・虚像を複合して作図で考えながら、屈折式望遠鏡を自作する研修会が行われました。
以下はその内容になります。
(1)ルーペの2倍と3.5倍の特性と望遠鏡の歴史
・1枚ずつで、近くで拡大して見える像は実像。手を遠くにすると、逆の虚像の風景が見える。
2枚重ねると、拡大して見える。これが、望遠鏡のレンズの原理。
・ハンス・リッペルスハイは、自分で教会の風見鶏をレンズを2枚重ねて見てみると、大きく見えたことから望遠鏡を作ったという説。
もう一つの説は、店に遊んでいた子どもがレンズを重ねていたのを見て、望遠鏡をひらめいたという説。
~子どもの遊びからの発想は大事~
・凸レンズと凸レンズの組み合わせの望遠鏡は、上下左右が反転するという欠点はあるが、視野は広いという利点がある。ヨハネス・ケプラーが考案。屈折式望遠鏡となる。1600年代に考えられたケプラー式が現在でも使われている。
・凸レンズと凹レンズの組み合わせの望遠鏡は、正立した像になる。しかし、視野が狭いので、オペラグラスぐらいにしか使われていない。ガリレオ・ガリレイの望遠鏡。
・アイザック・ニュートンは、反射望遠鏡を考案。レンズ径が大きくなり、星雲発見につながる。
(2)2枚の凸レンズの望遠鏡の仕組みを作図で考える
・1枚目は、実像ができる。その実像をさらに光源にして、2枚目の凸レンズで虚像になり、レンズを通して見ると拡大した像になる。これが望遠鏡で拡大した像が見える原理。
・作図なども、中1の授業の延長でできる。
学習問題「上下左右逆にしかも大きく見えるのはどういうわけか」
・望遠鏡の筒は、対物レンズの焦点距離の長さ以上があればいい。
・レンズの焦点距離の求め方は、公式もあるが、太陽の距離はあまりにも遠いので、太陽光を使って焦点の距離を測れば、そのまま焦点距離になる。
・太陽を使わないときは、レンズを通して印刷の文字を見て、文字がぼやける瞬間の距離が焦点距離になる。
・望遠鏡の倍率の求め方は、
「倍率=対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離」となる。
・例えば、2倍レンズで焦点距離18cm÷3.5倍レンズで焦点距離10cm=1.8倍となる。
・今回作成する望遠鏡は、3.5倍のレンズを2枚重ねたものを使用するので、2倍レンズ焦点距離18cm÷3.5倍レンズを2枚重ね焦点距離5cm=3.6倍の望遠鏡になる。
※対物レンズと接眼レンズが同じ焦点距離だと、1倍になる。
対物レンズ側の方が接眼レンズより焦点距離が長くないと、大きく見えない。
(3)3.6倍の望遠鏡の作成。
・鏡筒は直径がわずかに違う塩ビ管2本をつかって、部品を接着剤で貼り付けながら作成していく。
※接着剤が、レンズなどについてしまったら、消毒用アルコールで拭くと取れる。
・頑張って、作成。
・無事、完成し大きく風景などが見えます!
・これで星空を見ると、金星の満ち欠けやオリオン大星雲、スバルの星々が見えます。
【感想】
研修会で渋谷先生に教えていただきながら、実像を光源にして、もう一つのレンズで虚像にして見るということを作図を使って自分たちで考えることで、望遠鏡が拡大して見える原理が分かり感動しました。中1で学習したことの延長で作成されていることが分かり、理科の奥深さと生活と結びつくことのおもしろさを改めて感じました。レンズを2枚重ねると倍率や焦点距離が変化することや、2枚のレンズを組み合わせる発想など、目から鱗でした。柔軟に発想するものの見方や行動が大切なことも実感し、学習の中で子どもたちにそんな時間も作っていきたいと思いました。